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エラスチン線維 [elastic fiber]

動脈壁、肺胞、皮膚、腱、靭帯などの組織において、弾性を保つために働くもの.弾力線維、弾性線維ともいう.大動脈や靭帯では全乾燥重量の50%近くを占める.皮膚などでは量的には少ないが、重要な機能的と役割を果たしている.ことに皮膚真皮のエラスチン線維は、基底膜から皮下組織へ伸びる連続的なネットワークをつくっていて、皮膚の弾力性を保っているといわれている(図).
皮膚のエラスチン線維
エラスチン線維の主成分はミクロフィブリルフィブリリン)と無定型エラスチンであるが、そのほかにもいくつかの分子が結合している.2種類の主成分の比率は真皮内の位置によって異なり、線維の構造や機能にはその組成が反映されている.ミクロフィブリルが多いオキシタラン線維は、基底膜から垂直に伸び乳頭層を貫通して乳頭層と網状層の結合部に達し、水平に走行したより太いエラウニン線維に結合している.エラウニン線維は架橋されたエラスチンをオキシタラン線維よりも多く含む.また、成熟したエラスチン線維が網状層のコラーゲン線維(膠原線維)の間に分布しているが、この成熟線維の主成分はエラスチンで、ミクロフィブリルが無定型のエラスチンの細胞外マトリックスや線維の周辺に埋め込まれている.真皮を酵素消化し、ほかの成分を溶かして得られたエラスチン線維は、滑らかで枝分かれしたゴムバンド状の構造として観察される.
皮膚のエラスチン線維の機能
エラスチン線維のおもな機能は皮膚に弾力性を与え、皮膚のはりを保つことといわれている.また、基底膜直下に垂直に走行しているミクロフィブリルは、基底膜を真皮につなぐという重要な役割を果たしている構造体の一つである.老化に伴う皮膚の変化の中でエラスチン線維の変性による変化は大きな位置を占めており、皮膚のたるみやしわの原因は、このエラスチン線維の変性が大きな要因であるといわれる.自然老化ではエラスチン線維は減少することが知られている一方、光老化では、日光弾性線維症のように真皮乳頭層の線維は消失するが、網状層のエラスチン線維は量的にも増加し、かつ変性して無定型物質のような沈着が起こるとされている.これらが、弾力性がなく硬化したしわの多い光老化皮膚の原因と考えられている.(西山敏夫)

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