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調香師 [perfumer、 flavorist]
数千種類にも及ぶ天然香料と合成香料の中から、みずからつくり出そうとするイメージに必要と思われる香料を選択し、処方を組み立て、香りを創作する者のこと.フランスでは一流の調香師のことを、“ネ”(NEZ)と尊敬の気持ちを込めてよんでいるが、これは“鼻”という意味である.イメージを香りで表現する調香師は、香料素材すべてをかぎ比べ、記憶する能力はもちろん、なにより豊かな感性と創造性、芸術性が求められ、香りの調和、強さ、拡散性、持続性、嗜好性、安定性や安全性を考慮して創作にあたる.調香師のうち、香粧品香料を創作する者をパーフューマー、食品香料を創作する者をフレーバリストとよんでいる.パーフューマーは嗅覚を使い、フレーバリストは嗅覚のほかに味覚を使う.これらの職業は、厚生労働省所管の日本労働研究機構の職業ハンドブックにのっている職業であるが、国が決めた資格や免許はない.現在、フレーバーやフレグランスを教える民間の専門学校があるが、調香師になるための通常のコースは、香料会社が新卒者の中から正常な嗅覚や味覚のもち主で、香りへの興味が旺盛な者に社内教育をし、養成していくことである.香りを習得し、嗅覚や味覚の感度を上げ、応用力をつけていく過程は時間がかかり、一人前の調香師になるには5〜10年かかるので、ある意味では職人的で専門的な仕事である.
グレートパーフューマー:“ネ”の実像
20世紀最高の天才調香師といわれるエドモン・ルドニツカ氏は、1905年ニースで生まれ、1926年からグラースで仕事を始めており、その後パリで調香師として1949年まで活躍し、その後グラースの近くのカブリスの高台にアトリエ、アール・エ・パルファンを構えた.このアトリエからはモナコからサントロペに至るコートダジュールが一望でき、晴れた日にはナポレオンが生まれたコルシカ島まで見渡せた.このアトリエから数々の香水を生み出していくが、なかでも“ディオリッシモ”(1956年)、“オーソバージュ”(1966年)とパリの時代の作品である“ファム”(1944年)は名香で、“オーソバージュ”は男性用フレグランスの最高峰である.その作品の芸術性の高さと業績の偉大さから、グレートパーフューマー(偉大な調香師)とよばれ名声を博し、尊敬とあこがれの的となった.ルドニツカ氏があげる調香師としての要件は、①技術的な知識、②イマジネーション、③芸術的な審美眼、④才能である.現在活躍している調香師の中で、もっとも輝かしい人は“ロードウイッセイプールオム”“ジャンポール・ゴルチェ”“ブルガリプールオム”“ウルトラバイオレット”の作者である、ジャック・キャバリエ氏である.(浅越亨、武井英里子)