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乳化破壊 [demulsification]
エマルションの状態を壊すこと.解乳化ともいう.エマルションは本来不安定なものであるから、その安定化要因を取り除くことにより、破壊され分離する(→総論13.4.3項).たとえば、界面張力低下の原因となっている乳化剤の効果を弱める、消失させる、分散乳化粒子の電荷を中和する、乳化粒子の浮上あるいは沈降速度を高める、などの方法がある.以下に乳化破壊の方法を示す.
(1)無機塩の添加
イオン性界面活性剤を乳化剤として用いた水中油(o/w)型エマルションは、多原子価の反対イオンを含む塩を加えると電気二重層を圧縮したり、z電位を弱めたり、水不溶性の金属塩となったりしてエマルションを破壊する.また、非イオン性界面活性剤を用いた系では、多原子価の陽イオンを含む塩を加えると、非イオン性界面活性剤の水和力が低下するため、乳化破壊が促進される.
(2)温度変化
非イオン性界面活性剤を用いて乳化したエマルションには、温度により親水性-親油性が変化し、転相を生じるものがある.転相温度付近は不安定である.イオン性界面活性剤を用いた系では、沸点付近では粒子間の衝突の激化で不安定となる.また、凍結させると界面活性剤の水和水の脱離が起こり、エマルションは破壊される.一般に、加熱冷却を繰り返すとエマルションは不安定になり、乳化破壊が加速される.
(3)遠心力の付与
遠心力をかけると粒子のクリーミングが促進され、衝撃力、ずり力も働くため、乳化破壊が促進される.
(4)濾過
分散相(乳化粒子)が濡れやすいろ材を用いて、エマルションを濾過すると、粒子がろ材に濡れて液膜を生成し合一が生じる.
(5)HLBの移動
適正なHLB値で安定化している場合、HLBが大きく異なる界面活性剤を加えると、乳化破壊が促進される.
(6)その他
連続相と分散相の容積比の変化、高圧の交流電場の負荷、溶剤(エタノールなど)による界面活性剤の溶解・失効化などを要因としても乳化破壊が起こる.(鈴木敏幸)