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保湿 [moisturization]

角層保湿機能を補い、角層水分量の低下を防ぐこと.保水ともいう.肌にうるおいを与えることであり、スキンケア化粧品の主要な効果の一つである.
意義
角層水分量は外部環境の湿度に依存しており、水を塗布することによっても高まるが、徐々に蒸散してまもなく塗布前の角層水分量に戻ってしまう.このような一時的な増加は、角層水分量の低下に伴う症状の緩和、すなわち乾燥肌の改善には効果的ではない.角層水分量は角層保湿機能によって維持されるが、紫外線照射や刺激物質などの侵入などのように外部刺激を受けた場合や、加齢や内分泌、遺伝的な素因などの内的な要因によっても保湿機能は低下し、乾燥肌を引き起こしてしまう.低下した角層の保湿機能を補って角層水分量を長時間にわたって高く維持し、その結果として皮膚を柔軟に保ち、きめを整え、肌荒れなどの肌のトラブルを予防・改善することが保湿の役割である.
メカニズム
保湿を目的に用いられる薬剤を総称して保湿剤という.皮膚がもともと備えている角層の保湿機能を補うために、角層に水分を保持する効果を有する物質、あるいはそれを代償する物質の補給が広く行われる.その保湿効果のメカニズムから、エモリエントとヒューメクタントに大別される.(1)エモリエントワセリンに代表されるように、それ自体には水を蓄える作用はないが、閉塞性に基づくものである.皮膚からは角層を通して水分蒸散が起こっているが、その上部を閉塞してしまうことで角層内に水分を貯留させて、角層水分量を長時間にわたって高めるものである.皮膚の生理的な機能は、皮脂膜の働きに似ているが、皮脂膜のおもな成分であるトリグリセリドに比較して顕著に優れた閉塞性を示す油分などが実用的である.代表的なエモリエント成分を表に示した.(2)ヒューメクタントアミノ酸尿素に代表されるように、角層成分との親和性に富み、角層成分との相互作用において水分を保持しやすいもので、その結果として角層水分量を長時間にわたって高めるものである.皮膚成分としてはアミノ酸やピロリドンカルボン酸ナトリウム*などをあげることができる.(3)その他ヒアルロン酸やタンパク質加水分解物など吸湿性に富む高分子も保湿剤としてよく用いられる.高分子ゆえに角層内部の成分とは相互作用しにくいが、水を保持しやすい性状に基づいて、その塗布によって角層水分量を長時間にわたって高めるものである.エモリエントとヒューメクタントは保湿剤の機序を表す用語であり、その両者の特徴をあわせもつ保湿剤などもある.また、実使用場面においてはそれらを区別することなく、むしろそれらのバランスを重視した乳化系が用いられることが多い.また、角層細胞間脂質の補給を目的として、製剤としてラメラ構造に類似したベシクルを含む製剤も開発されている.(平尾哲二)

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