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角層細胞間脂質 [stratum corneum intercellular lipid]

細胞間脂質ともいう.角層細胞の間を満たす脂質で、セラミド脂肪酸コレステロールを主要な成分として含み、ラメラ構造(層状構造)を形成する.角層重量の約15%を占める.角層細胞間脂質を構成する各成分は、ケラチノサイト(主として顆粒細胞)で生合成され、層板顆粒(ラメラ顆粒)に蓄積される.そして、顆粒細胞が角層に移行するさいに細胞外に分泌され、さらに酵素的な代謝を受けて細胞間にシート状のラメラ構造を形成し、角層バリア機能に対して重要な役割を果たす.角層細胞間脂質のラメラ構造の形成には、セラミド、脂肪酸、コレステロールなどの脂質成分の構成比が重要で、その比率の偏りはラメラ構造の性状変化となり、バリア機能の低下の原因と考えられている.角層細胞間脂質の構成成分は、脂質を抽出して薄層クロマトグラフィーなどの手法により分析することができ、そのほか質量分析などの手法も応用されている.また、角層細胞間脂質の形態観察も重要な情報を与える.一般には透過型電子顕微鏡による角層の観察により、ラメラ構造を形成している角層細胞間脂質は極性基部分の規則的な配列による縞模様が認められる.この縞模様の消失はラメラ構造の乱れ、すなわち角層細胞間脂質の変化によるバリア機能不全において、しばしば観察される.主要な構成成分(1)セラミド→セラミド(2)脂肪酸角層細胞間脂質を構成する遊離脂肪酸としては、長鎖(炭素数C22〜C24を中心に)の飽和脂肪酸が多く、一部にオレイン酸リノール酸などの不飽和脂肪酸が存在する.遊離脂肪酸はアセチルCoAを原料として生合成され、リン脂質の一部を構成し、細胞膜の主体をなしている.角層細胞の形成にあたりホスホリパーゼがリン脂質に作用して、遊離脂肪酸が切り出されて、角層細胞間脂質として供給される.(3)コレステロールコレステロールも主たる細胞膜構成成分で、生体膜の流動性に大きな影響を与えることが知られている.血液中にもリポタンパク質として存在し、皮膚にも供給されるが、ケラチノサイトはそれ自身でコレステロールを生合成することができる.アセチルCoAを出発材料として、メバロン酸、スクワレンを経て生合成されたコレステロールの一部はエステル化され、コレステロールエステルとして、あるいは硫酸コレステロールとして角層細胞間脂質の成分となる.(平尾哲二)

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