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コーニファイドエンベロープ [cornified envelope、 cornified cell envelope]
角層細胞を包む厚さ約10 nmの不溶性の膜状構造.角化肥厚膜、辺縁帯ともよばれる.インボルクリン、ロリクリンなどのさまざまなタンパク質から構成され、それらの分子間の架橋によってきわめて強固な構造となり、ケラチン線維とともに角層の物理的あるいは化学的な強靭性に寄与している.インボルクリン、ロリクリンなどのコーニファイドエンベロープを構成するタンパク質は、ケラチノサイト(表皮角化細胞)の分化に伴って遺伝子発現して産生される.そのほとんどは可溶性タンパク質で細胞質に存在するが、トランスグルタミナーゼによって架橋され不溶化するとともに細胞膜直下に凝集される.そしてコーニファイドエンベロープを形成するというわけである.その外側にはw-ヒドロキシスフィンゴシンなどの脂質が結合して(リピッドエンベロープともよぶ)、角層細胞間脂質の層板顆粒(ラメラ構造)の配向に土台を提供していると考えられている.葉状魚鱗癬(ようじょうぎょりんせん)はトランスグルタミナーゼの変異に起因する遺伝性皮膚疾患であり、コーニファイドエンベロープが形成されず、重篤なバリア機能不全を示す.バリア機能の低下を伴う肌荒れなどにおいては、コーニファイドエンベロープが十分に成熟しないことがその原因の一つとなっていることも報告されている.コーニファイドエンベロープはその不溶性を利用して、角層試料などから調製することができる.すなわち、ドデシル硫酸ナトリウムとSH還元剤(メルカプトエタノールやジチオスレイトールなど)の水溶液中で煮沸をすることで、ケラチンなどを可溶化し除去することによって、その残渣(不溶性成分)としてコーニファイドエンベロープが回収される.これを顕微鏡下で観察すると、膜状の構造物を観察することができる.(平尾哲二)