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スキンケア化粧品 [skin care product]
顔面やからだ全体の肌を手入れするための化粧品.皮膚は、生体を覆っているもっとも外側の器官で、外界の紫外線、乾燥、酸化、細菌や化学物質などの外的悪因子から生体を防御するバリア的役割や、生体の免疫の一部をつかさどる器官である.一方で、精神的なストレスや性周期に伴い皮膚の調子が変化するように、精神神経系や内分泌系などとも密接にかかわりをもつ.スキンケア化粧品の基本的な目的は、このような皮膚の役割を十分発揮できるように皮膚機能を整えたり、外的刺激から肌を守ったり、皮膚みずからが備えているホメオスタシスの力を最大限引き出しながら、より美しく健康な肌を維持させることにある.また、しみ・そばかす、にきび、肌荒れなどの肌悩みを予防・改善したり、しわやたるみなどに代表される肌の衰えを防ぐなど、自分がもつ肌の質を高める役割ももつ.スキンケアは、その目的はもちろんのこと、個々の肌質や肌状態、年齢などに応じて、正しい使い方つまり使用する化粧品の種類、美容ステップ、使用方法、使用量などを十分考慮して行うことが望ましい.こうした点から、スキンケア化粧品は目的によって四つに大別される.
(1)悪影響を取り除く
化粧品皮膚表面には塵(ちり)や埃(ほこり)、汗や皮脂などの老廃物、古くなった角層片、メークアップ料などが付着している.これらの汚れをそのまま放置しておくと、ざらつき、毛穴の黒ずみ、にきびなどの肌トラブルの原因になるので、朝または晩の手入れのさいにまずこれらの汚れを取り除き、肌を清潔にすることを目的に使用される.①洗顔料:肌表面の汚れを洗い流して落とす製品.固形石けん、液状、フォーム状、ムース状などの剤型がある.②パック、マスク:洗顔などで落としにくく肌にとって不要なもの、たとえば毛穴に詰まった汚れや角栓、余分な古い角層などを積極的に取り除く製品.スクラブ剤配合製品、ゴマージュ製品、マッサージによって温感が得られるもの、コットンによるふきとり式ローションなど、剤型も使用法も多種多様にある.
(2)バランスを整える
化粧品日中に紫外線をはじめとする外界の悪影響や、精神的ストレスや肉体疲労によって、皮膚はさまざまなダメージを受ける.こうした皮膚の状態を最適バランスに整え、肌が本来の力を発揮しやすい環境に戻すことを目的とする化粧品.通常、洗顔後に化粧水で水分や保湿成分を補い、乳液で油分を補給してモイスチャーバランスを整え、肌表面を健康な状態に保つ.これにより肌表層が整い、柔軟になり、つぎに使用する化粧品のなじみもよくなる.①化粧水:肌に水分やうるおいを与える保湿剤を補給し、皮膚にしっとりとしたうるおいやみずみずしさなどを与える製品で、透明のものから半濁や白色状のものまである.機能としては、保湿、にきび防止、肌荒れ改善、美白、しわ・たるみ防止など目的に応じてさまざまなものがある.②乳液:肌におもに油分を補給し(水分、保湿剤なども含む)、表面を覆って皮膚からの水分蒸発を防ぎ、肌をしなやかにするとともにうるおいを保つ製品.機能は化粧水と同様にさまざまなものがあり、通常は化粧水の後に使用する.③保湿液:肌にバランスよく、必要な水分・油分を補給し、肌を柔軟にし、うるおいを十分に与える化粧品.
(3)活力を与える
化粧品より健やかで美しい肌を保ち、肌機能の改善を助けたり、肌の活動をより順調にすることを目的とする.美容液やクリームのように配合成分が肌に直接働きかけて、しみ・そばかす、しわ、たるみ、にきび、肌荒れなど種々の肌悩みを改善する製品や、マッサージによって血行を高め、皮膚の新陳代謝を促進したり、収れん化粧水をパッティングする化粧品がある.①美容液:特定の肌悩み、たとえばしみ・そばかす、しわ、たるみ、にきび、肌荒れなどを予防、改善する製品.その機能は幅広く、剤型も化粧水状からクリーム状まで多種多様にある.②マッサージ料:皮膚をマッサージすることで、末梢の血液循環を促して皮膚の新陳代謝を高め、皮膚全体の機能を総合的に向上させることを目的とする.さまざまな機能を付与できるが、皮膚全般の賦活を目的とする製品が多い.剤型は、ある一定の時間内、軽く肌の上を指でマッサージできるような適度なのびが必要であるため、とろみのある化粧水状、乳液状、クリーム状が多い.③パック、マスク:一定時間、肌を覆い、水分蒸発を防ぐとともに、必要な有効成分を肌に浸透させることが目的の製品.肌の上にジェルやクリーム状のものを厚く塗ったり、シート状のものをはり10分程度放置した後にふきとったり、水で洗い流したり、はがしたりして使用する.機能は肌悩みや目的に応じてさまざまなものがある.④収れん化粧水:清涼感とともに、肌をすっきりと引き締め、血行に作用することで皮膚温調整効果も有している.パッティングして使用すると、さらに高い清涼感や引き締め感が得られるが、機能としては、毛穴の引き締め、過剰な皮脂のコントロール、ほてりや炎症の鎮静化などがある.⑤クリーム:美容液と同様に、特定の肌悩みを予防、改善する製品であるが、美容液よりも水分蒸発をおさえるオイルシール効果に優れることから、保湿効果や賦活機能がより高く、その効果の持続性にも優れている.また、一つのクリームでさまざまな肌悩みに対応する多機能性を有する製品も多い.
(4)環境から守る
化粧品外界の紫外線、乾燥、酸化は肌にダメージを与え、そのダメージの蓄積がしみ、しわ、たるみに代表される老徴を引き起こす.このような外的悪影響から肌を物理的に防御することを目的とする化粧品で、紫外線の防御レベルを示したSPF を付与した製品が中心となる.近年では、真夏の強い紫外線だけでなく、洗濯物を干したり買い物に出かけるといった日常の生活レベルで浴びた紫外線(生活紫外線)が皮膚に障害を与え、老化の引き金になることがわかっている.このことから紫外線からの防御は、健やかで美しい肌を維持する上できわめて重要なスキンケアと位置づけられる.生活紫外線を防御する場合には、朝のスキンケアの最後に使用するが、レジャー時には2〜3時間おきに使用するなど、目的に応じて適切なSPF 数値の製品を選定し、また正しい方法で使用することが望ましい.①日中用美容液、日中用クリーム:普段の生活シーンで、紫外線や乾燥などの外的悪影響から肌を守るための製品で、乳液状からクリーム状の剤型が多い.②日焼け止め:おもにレジャーシーンや真夏の強い紫外線下で使用するが、最近では、普段の生活でも使用されるようになり、市場にはおよそSPF 15〜50+、PA+〜+++までさまざまな製品が出ている.剤型も乳液状とクリーム状に加えて、スプレータイプやシート状などがある.また、紫外線吸収剤だけを用いた製品、紫外線散乱剤だけでノンケミカル処方を訴求した製品、両方併用した製品などがあり、肌質、使用場面などに応じた製品の選定と正しい使用法の遵守が望ましい.(高須恵美子)