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皮膚刺激 [skin irritation]

刺激物質物理的刺激によってダメージを受けた皮膚の細胞から放出された炎症メディエーターによって生じる、免疫系を介さない可逆的な炎症反応.とくに表皮のケラチノサイト(表皮角化細胞)は、刺激によりアラキドン酸代謝物やサイトカインなどを産生することで中心的役割を果たしている.そのメカニズムは刺激物質ごとに異なり複雑であるが、①角層の物理化学的変化による角層バリア機能の損傷、②ケラチノサイトの細胞死あるいは炎症メディエーターの放出、③好中球などの炎症性細胞の血管からの浸出や真皮線維芽細胞のダメージ、というようにおおまかにとらえることができる.化学物質の皮膚刺激性を評価する方法にはパッチテストや動物を用いた方法があるが、倫理的な課題もあり、試験管内において評価しようとする試みが現在盛んに行われている.その代表的なものが三次元培養皮膚を用いた方法で、細胞毒性ポテンシャルや炎症メディエーターの放出を指標にした評価法の検討が精力的に進められている.
皮膚刺激感受性(sensitivity to skin irritation)
皮膚刺激が生じた場合の各個人間での反応性の違いをさす言葉.たとえば皮膚に対して同一の刺激物質を同一濃度で塗布したとしても、反応の程度が個人によって異なる場合があることが知られている.これは刺激に対する感受性の違いから生じると考えられるが、この刺激感受性には角層バリア機能などいくつかの内的な要因がある.また、紫外線やそのほかの物理的刺激に対する感受性も個人により異なる.自身の皮膚を敏感肌と考えるおもな理由として、こうした刺激に敏感な点をあげる人は多い.(→総論6.5節)
皮膚刺激反応(skin irritation response)
皮膚に塗布された化学物質や製品によって生じる皮膚の炎症反応の一つで、アレルギーを介さない反応.これに対して、皮膚アレルギー反応はアレルギーを介した反応となる.また、皮膚刺激反応にも一次刺激性反応と連続(累積)刺激性反応の2種があり、一次刺激性反応は皮膚を直接障害するような刺激性の強い物質が皮膚に作用して即時的に現れる皮膚炎で、ある程度以上の刺激の強いものが接触すれば、大部分の人に反応が現れる.一方、連続(累積)刺激性反応は弱い刺激物質が反復暴露されることによって、皮膚バリア機能(→角層バリア)が障害され、刺激反応を起こす反応をいう.肉眼的には紅斑(赤み)、浮腫(むくみ)、腫脹(はれ)、丘疹(ぶつぶつ)といった症状が見られる.(足利太可雄、小川朋康)

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