LIBRARY ライブラリー
クリーム [cream]
水と油のような混じり合わない二つの液体を安定な状態で分散させたエマルションの一種である.ただし近年、広義には白濁し流動性のない粘性をもつものを、クリームとよぶことがあり、水分あるいは油分をまったく含まないものもある(無水クリーム).クリーム剤型の化粧品はもっともよく目にするものの一つで、基本的なアイテムとして化粧品に欠くことができない.種類としては、洗顔、マッサージ、クレンジング、日焼け止め、シェービング用など各種用途にあわせた商品が各種開発されている.広い意味でクリームを考えた場合、目的も非常に多岐にわたり、すべてを網羅することは難しい.したがって、ここでは保湿、柔軟性の付与を目的としたクリームを中心に述べることとする.クリームがいつごろから使用されていたかは明確ではないが、古代ローマ時代には垢(あか)を落としたり、温度や光などから皮膚を守るために油性クリームが用いられたとされている.皮膚は皮脂や水分により保湿状態が保たれているが、洗浄行為あるいは部位や季節などによってこれらが減少し、乾燥する.こうした皮膚に水分、油分を補い、保湿や柔軟機能を付与することがクリームのもっとも重要な目的である.また、薬剤などの成分を効率的に肌に与えるための基剤としても重要な役割を担っており、軟膏基剤としても利用頻度は高い.クリームは安定性に優れ、水分、油分、保湿剤などを幅広い割合で配合できるため、年齢や肌質に応じて調整することが比較的容易である.クリームはその水分量や油分量によって一般に大まかに分類することができる(表1).
(1)無油性クリーム
油剤をまったく配合しておらず、おもに水溶性ポリマーなどで増粘、賦型したものである.油分を含まないため、非常にさっぱりとした使用感のものが多い.
(2)弱油性クリーム
油分が少なく、使用感はさっぱりしているものが多い.代表的なものに乳化剤として脂肪酸石けんを利用したバニシングクリームがあるが、pHがアルカリ性になるため、近年においては非イオン性界面活性剤を配合し、脂肪酸石けんを少なくしたタイプなどが見られる.
(3)中油性クリーム
油分量が弱油性クリームと油性クリームの中間で、もっとも一般的なもの.保湿をおもな目的とするスキンクリームやナイトクリームなども中油性クリームが中心である.しっとりとしたうるおいを付与でき、それでいて比較的さっぱりしている使用感が特徴である.
(4)油性クリーム
含水油性クリームと非乳化性油性クリーム(無水クリーム)に細分される.油中水(w/o)型クリームは油分の多い乳化型クリームで乾燥肌のケア用として活用されてきた.代表的なものにコールドクリームとよばれるものがあり、これらは水分の揮散により冷たく感じる.また、メーク汚れなどを除去する目的で使用されるクレンジングクリームなどもw/o型クリームの一つである.一方、非乳化性油性クリーム(無水クリーム)はおもに薬剤を配合して肌荒れを防ぐ単軟膏や、ドーランなどのハードメークを除去するクレンジングクリームに使用されるが、あまり一般的なものではない.
構成成分
おおまかには水相成分、油相成分、界面活性剤で構成されており、軟らかさ、硬さをクリームに付与するための高級アルコールや水溶性ポリマー、経日安定性を保つための防腐剤、酸化防止剤などが添加される.また、必要に応じて保湿剤や美白剤などの薬剤を配合する(表2).融点の高い油剤や粘性の高い油剤を添加すれば、コクのあるクリームが調整でき、逆にさっぱりとした粘性の低いエステル、シリコーン油などを配合すれば、さっぱりべたつかないクリームを調整することができる.
構造
クリームは乳化という技術を用いて、水相成分に油相成分あるいは油相成分に水相成分を分散させたもので、基本的は水中油(o/w)型エマルション、油中水(w/o)型エマルションの二つに分類される.クリームの製造方法については総論18.1.1項を参照のこと.(樋口清信)