LIBRARY ライブラリー
リンクルケア [wrinkle care]
しわ対策.しわ形成に結びつくと考えられている悪影響を極力排除して、しわができるのを予防する日常的な手入れから、小じわを軽減するようなクリーム、果てはフェイスリフトのような外科的手術によるしわの除去までさまざまな方法がある.日常のスキンケアによる予防しわは細胞老化や全身的な代謝の低下に起因する自然老化と、紫外線などの外的要因による角層、表皮、基底膜、真皮の機能や構造の変性が互いに絡み合いながら、長い年月を経て積み重って形成されるものである.したがって若いうちからそれぞれの要因に対して複合的な対策をとっておくことが望ましい.乾燥から肌を守り皮膚の水分量の低下を防ぐ保湿剤や、角層肥厚(角層重層化)を抑制する角層重層化防止剤を使用して、まず硬くなった角層を柔軟にする.また、体内外の活性酸素(→フリーラジカル)によるダメージを防ぐための抗酸化剤、ケラチノサイト(表皮角化細胞)の機能を維持する各種細胞賦活剤、コラーゲン産生を促進するコラーゲン合成促進剤、真皮組織の分解につながるコラゲナーゼやゼラチナーゼの抑制剤、基底膜の機能を維持する基底膜ケア剤なども重要である.さらには、紫外線により深いしわが形成されやすくなることから、日焼け止め化粧品などを利用してできるだけ紫外線を防ぐことも重要である.小じわ対策化粧品レチノールやレチノイン酸をはじめとするビタミンA関連物質を配合したクリームなどが、目尻などのしわの改善に有効である.美容皮膚科的治療おもに二酸化炭素(炭酸ガス)レーザーを用いて、真皮を熱変性させて収縮させ、しわを改善するレーザー治療が1990年代ごろから欧米で普及した.その後、より副作用の低いEr-YAG(エルビウム・ヤグ)レーザーや、表皮を保護しながら真皮のみに熱変性を与えるNd-YAG(ネオジウム・ヤグ)レーザーなどの各種レーザー光が開発され、近年ではフラッシュランプという種類の光の照射により真皮中の毛細血管に作用してコラーゲン線維の合成を促進させるという方法についての報告もある(→レーザー治療).額や口周囲のしわに対してアテロコラーゲンを注入する方法は国内でも認可されており、広く普及している.また海外では、アレルギーや吸収の問題を解決したヒアルロン酸類縁体やPMMA(皮膚内で分解されずに永久に残る)ビーズを配合した製品も開発されている.欧米では、額の横じわ、眉間の縦じわ、からすの足跡など筋緊張性のしわや笑いじわなどにボツリヌス毒素を局注する方法が効果をあげている.しかし周囲に拡散して目的外の麻痺を誘発したり、抗体による耐性などの問題があり、国内では美容目的には使用できず、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)に対する医薬品として認可されているのみである.ホルモン置換(補充)療法閉経前後の急激なホルモンレベルの変動に伴う諸症状を緩和する目的で行われる治療方法.各種女性ホルモンを補充するホルモン置換(補充)療法を受けた女性は、皮膚コラーゲン量の低下がおさえられ、またムコ多糖やヒアルロン酸を増加させることで皮膚水分量を増加させ、その結果しわが改善したという報告もある.しかしながらホルモン類は少量で全身的にさまざまな作用を引き起こし、個人によっては乳がんなどの重篤な副作用の可能性もありうるので慎重に行われなければならない.外科的手術フェイスリフトに代表されるような美容外科的手術は、頬、首、額、上下まぶたの重力による軟部組織の下垂や余分な皮膚のしわを除去するものである.その若返り効果は非常に大きいが、費用や一定の回復期間を余儀なくされるなど簡単ではない.(江浜律子)