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抗しわ剤 [anti wrinkle agent]
しわの予防や改善をするもの.一概にしわといってもその形態には大きな違いがある.皮膚を構成する角層、表皮、真皮、皮下組織は相互に作用しあい、皮膚の形態に影響を及ぼしているが、しわは、角層の乾燥によって起こる細くて浅い溝のような乾燥性のしわ、目尻などに見られる通称からすの足跡とよばれるような小じわ、額や頬などに見られる長くて深い明瞭なしわに大別できる.また、小さいしわほど角層、表皮の関与が大きく、大きいしわになるにつれて真皮の関与が大きくなる.抗しわ剤は、対象とするしわの種類によって異なる.(1)乾燥性のしわおもに角層の乾燥に起因するしわであるため、保湿剤により予防、改善ができる.スキンケアに使用されているグリセリンやヒアルロン酸などが有効である.(2)目尻などの小じわ組織学的には表皮から真皮乳頭層あたりまでが変形してしわを形成している.角層や表皮への作用によりしわを軽減するものとして、保湿剤や、表皮ヒアルロン酸合成を促進して表皮のターンオーバーに影響するビタミンA誘導体などがある.また、表皮から真皮にかけて作用するものも有効と考えられるが、それらについては次に示す.(3)額や頬などの長くて深い明瞭なしわこれらは永久的なものと考えられており、その原因は自然老化による細胞機能や組織の変化と、日光にさらされ大きなダメージを受ける光老化がある.しわ形成メカニズムの研究からその要因は、①真皮の線維芽細胞の加齢に伴うコラーゲン代謝活性の変化と紫外線や活性酸素のコラーゲン代謝系に及ぼすコラーゲン線維(膠原繊維)の量的・質的変化、②紫外線による真皮エラスチン線維代謝異常によるエラスチン線維(弾性線維)の変性と、異常エラスチン線維の沈着、③表皮への紫外線による作用で、ケラチノサイトのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)類の産生が異常になり、基底膜や真皮線維にダメージを与えることなどがわかってきている.よって真皮のコラーゲン線維やエラスチン線維などの量的・質的変化を防御することがしわ形成の予防や改善につながると考えられる.このような観点から、種々の日焼け止め剤、抗酸化剤、活性酸素除去剤、MMP阻害剤などが有効である可能性が高い.このほか、レチノイン酸やレチノールもしわの改善効果が確認されている.これらの作用メカニズムとして、表皮でのMMPの発現を抑制することや、真皮乳頭層でのコラーゲン線維新生が促進されること、さらに変性エラスチン線維が減少することなどが提唱されている.このほかにもα−ヒドロキシ酸(AHA)なども抗しわ作用があることが知られている.(西山敏夫)