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皮膚毒性試験法 [method for cutaneous toxicology]

化学物質、環境などが皮膚に対して与える影響を検討するために行われる試験およびその方法.皮膚は、角層表皮真皮皮下組織さらには付属器官から構成される特徴的な構造および機能を有しており、表皮はケラチノサイト(表皮角化細胞)のほか、色素細胞であるメラノサイト抗原提示機能を有するランゲルハンス細胞からなる.真皮は線維芽細胞、組織球、マスト細胞などの細胞とコラーゲン線維(膠原線維)およびエラスチン線維(弾性線維)、さらには細胞と線維の間隙のグリコサミノグリカンおよびプロテオグリカンから構成されている.また、付属器官として体毛、皮脂腺、汗腺、爪などがあり、きわめて多様な構成である.したがって、皮膚に対する毒性試験は多様な機能を考慮する必要がある.皮膚は外界からの化学物質やさまざまな環境条件に対して高度に発達した防御機能を有しているが、毒性の強い物質や過剰な物理化学的刺激にさらされた場合には、皮膚傷害が発症する.化学物質による皮膚傷害は接触皮膚炎と総称され、発症機序により、刺激性接触皮膚炎と免疫機構に基づくアレルギー性接触皮膚炎に大別される.刺激性接触皮膚炎に属する一次刺激性皮膚炎は、化学物質の初回の暴露により発症するものであり、また、連続(累積)刺激性皮膚炎は弱い刺激性を示す物質が繰り返し皮膚に接触することにより誘発されるものである.これらの皮膚炎症は紅斑を主体とする炎症反応を示し、強度により浮腫を伴い、さらに傷害が激しい場合には、水疱、痂皮が形成される.一方、アレルギー性接触皮膚炎には、体液性免疫にもと基づく接触じんま疹と細胞性免疫による遅延型アレルギー性接触皮膚炎があり、発症頻度は遅延型アレルギー性接触皮膚炎のほうが高い.また、過度の日光照射により生じる日光皮膚炎のほか、光感受性物質の存在下で光線の暴露により発症する炎症反応を光線過敏性皮膚炎とよぶ.光線過敏性皮膚炎には光毒性皮膚炎および光アレルギー性接触皮膚炎がある.
皮膚毒性試験
一般的な方法には、刺激性試験として皮膚一次刺激試験、連続皮膚刺激性試験、パッチテストなどがあり、皮膚感覚刺激性を評価する試験法としては、スティンギング試験がある.また、接触アレルギー性試験としては皮膚感作性試験が一般的で、光線過敏性試験としては光毒性試験、接触光アレルギー性試験がある.化学物質あるいは製剤の皮膚に対する毒性を評価する場合には、さまざまな要因が結果に影響を与える.投与する物質、製剤の用量、濃度、pH、粘度、基剤、純度、温湿度、光線量、光線強度、波長、適用法、適用時間、判定時間、角層の状態、免疫遺伝的背景などの因子がそれである.(→安全性試験)(市川秀之)

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